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まだまだ多い犬猫の殺処分

毎年30万匹以上の 
尊い命が

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スペース シェルターの犬

▲シェルターの犬。人間を恐れて小屋から出ない

20日から26日は動物愛護週間。「飼えなくなった」などの理由で保健所などが引き取り、殺処分された犬猫は、2004年度、全国で約33万3千匹(犬約9万4千匹、猫約23万9千匹)にのぼった。しかし、22年前には約78万8千匹の犬猫が殺処分されていたことを考えると、これでも半分以下になったことになる。殺処分される犬猫を減らすための行政の対応と、ボランティアの動物愛護団体の活動を取材した。

【戸田 照朗】

飼い主を待つ子猫

▲譲渡会で新しい飼い主を待つ子猫

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千葉県がワースト1

この数字は動物愛護法による殺処分で環境省がまとめたものだが、捕獲によって収容された犬を入れている自治体と、入れていない自治体があったり、狂犬病予防法で殺処分された犬は入っていないことから、実際にはもっと多くの犬猫が殺処分されたことになる。千葉県では、2万662匹を処分。これは他の自治体に比べるとダントツに多く、全国ワースト1だ。ちなみに多い自治体としては、長崎県の1万7千82匹、福岡県の1万5千573匹、広島県の1万3千700匹、兵庫県の1万2千728匹、大阪府の1万365匹など。首都圏では、東京都が9千244匹、神奈川県が8千445匹、埼玉県が5千866匹。

先に述べたように、このデータには自治体で統計の仕方にバラツキがあるため一概には比べられないが、全国で2万匹を超えているのは千葉県だけ、首都圏の自治体と比べても2倍から4倍弱という数には驚かされる。

昨年、05年度の全国的なデータはまだ集計されていないが、千葉県(千葉市、船橋市を除く)では約1万4千900匹までその数を減らすことができた。これは、昨年、犬猫の引き取り窓口を80か所から、19か所に大幅に減らしたためと見られている。また、今年の6月1日からは、犬猫の引き取りを有料化(成犬・成猫1匹2000円、子犬・子猫1匹400円)し、さらに引取数と殺処分数の減少を目指しているが、今のところ著しい減少傾向は見られないという。

04年度の引き取りによる殺処分数は、全国で犬猫合わせて約33万3千匹だったが、22年前の84年には約78万8千匹、17年前の89年には約71万1千匹、12年前の94年には約56万8千匹、7年前の99年には約42万匹と、徐々に減ってきている。千葉県(千葉市を除く)でも、89年には約3万5千匹、94年には約3万1千匹、99年には約2万5千匹と数を減らしている。

これは、行政や動物愛護団体の啓蒙活動や譲渡活動などの努力、また、徐々に飼う側の意識が変化してきたことによるものと思われる。

保護に奔走する愛護団体

茨城県で活動を続ける2つのボランティアの動物愛護団体を取材した。茨城県では、04年度、引き取りにより9千557匹の犬猫が殺処分された。

どうぶつ福祉の会AWS(アウス)は、捨てられた犬猫を一時保護するシェルターと動物病院を持っている。同会では、現在犬20匹、猫22匹を保護している。これらは一般からの通報などによって保護された犬猫で、飼えないから何とかして、といった引き取りには対応しない。

保護した犬猫は、埼玉県鷲宮町の沼井公園(10月1日)、ジャスコ取手店(10月8日)、柏市柏の葉公園(10月15日)で譲渡会を行っているほか、ネット上でも里親を募集している。

ただ、譲渡には慎重に対応しているという。せっかく譲渡先が見つかっても、犬猫たちが幸せに暮らせなくては意味がない。不妊去勢手術を行う約束をして譲渡しても、なかなか実行してくれない飼い主がいることから、最近では、幼年手術で手術済みの犬猫を渡すようにしているという。ワクチン、手術代は負担してもらう。譲渡先の住環境や年齢も考慮する。相手が高齢で、元気のいい子犬を希望しても、うまく世話ができるか不安が残るし、犬よりも先に他界してしまう可能性がある。その場合、残された犬は、また身寄りを失うことになる。

記者がシェルターに近づくと、しり込みして自分の小屋に隠れてしまう犬や、いつまでも吠えている犬が多い。保護される前に人間に酷い目にあったのか、人を怖がって慣れない犬は、譲渡会にも出せず、いつまでもシェルターに残っているのだという。この犬たちの大半は同会のシェルターで一生を終えるという。

また、猫たちはいくつかの部屋に分かれて暮らしていた。冷暖房完備で、中はなかなか快適そうだ。猫エイズや白血病の猫は、病気ごとに別の部屋で暮らしている。この猫たちも、同会の施設で一生を終えることになるだろう。

同会では殺処分する施設から犬猫を引き取ったこともあるが、伝染病を持っていることが多く、施設からの保護は難しいという。シェルターで保護している他の犬猫に病気がうつると、全滅の可能性もあるからだ。

保護した犬猫には、身体に重い障害を持ったものも多い。そんな犬猫が心ある飼い主に引き取られて幸せに暮らしているという報告を聞くときが一番嬉しいと、代表の上山幸子さんは言う。「本当にこういうことをやってきて良かったと思う。私たちに対する報酬はこれです。精神的なほうびしかない」。

同じく茨城県内で活動するポチたま会は、約5年前にAWSから別れた。AWSは農村地帯にあるが、ポチたま会は比較的都市に近い住宅地で活動している。

同会は、現在、会員宅に犬26匹、猫19匹を保護している。

松戸中央公園(第1日曜日。次回は10月1日、午前11時〜午後2時。1090・1796・3673峯岸)、ジャスコ取手店1階屋内駐車場(第2日曜日)、川崎市中原平和公園(第3日曜日)、和光市和光樹林公園(第4日曜日)で譲渡会を行っている。犬猫の持ち込みは不可。また、ネットでの里親募集も行っている。

動物を保護している団体では、動物にかかる医療費が大きな負担となるが、同会では協力してくれる獣医がいて、通常より安価で治療してもらっているという。

同会でも、ワクチン代を譲渡先に負担してもらうほか、不妊去勢手術の費用を「約束金」という形で、事前にもらっている(手術後に返還)。

「最近は、お金をいただきやすくなりましたが、以前はお金がかかるというと、エエッ? と驚かれる方もいた」と代表の川上郁子さんは話す。ここ何年かで、飼い主の意識もだいぶ変わってきたようだ。

しかし一方で、今でも子犬や子猫を川に流したり、反対に子犬が生まれると、親犬を捨てたりする信じられない飼い主もいるという。また、最近はミニチュア・ダックスなど純血の捨て犬が増えていることも気になるという。今までにも、シベリアン・ハスキーやチワワなどペットのブームが起きては、ブームが去ると捨てられるということが繰り返されてきた。心ない飼い主にとっては、犬猫は流行りの玩具でしかないのだろうか。

※記事中に団体の所在地を掲載しませんでした。記事が出ると、団体の周囲に犬猫を捨てていく人が増えることがあるそうです。詳しい情報は、ホームページをご確認ください。

どうぶつ福祉の会AWS=http://homepage2.nifty.com/AWS〜dogs-cats/
ポチたま会=http://www5b.biglobe.ne.jp/〜inu-neko/

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不妊去勢キャンペーン

首都圏約80の動物病院とボランティアによる「不幸な犬猫をなくすネットワーク千葉」は、今年も通常料金の半額程度で犬猫の不妊去勢手術を提供する「不妊去勢キャンペーン」を実施する。

保健所へ持ち込まれ、殺処分される犬猫の約80%が子犬子猫。同ネットワークでは、「動物の愛護及び管理に関する法律」の啓蒙を促進するとともに、趣旨に賛同する獣医師の協力のもと、不妊去勢手術の必要性を訴え、同キャンペーンを毎年実施している。過去16年間に首都圏で約5万頭の手術を援助してきたという。

【不妊去勢キャンペーン】

▼対象=手術費用にお困りで、東京、神奈川、千葉、埼玉の指定病院に連れて行ける方 ▼手術期間=9月20日から来年3月末日まで ▼申し込み方法=手術を受けさせたい・犬猫の別・性別・頭数・申し込み者の住所、氏名、電話番号を封書の裏側に明記し、90円切手を貼った返信用封筒(申し込み者のあて先を記入)を同封の上、〒285│0807千葉県佐倉山王郵便局局留「不幸な犬猫をなくすネットワーク千葉」行へ ▼キャンペーン期間中の手術料金=猫メス1万500円、オス5500円。犬メス1万8500円、オス1万500円(犬のみ15・以上は料金加算) ▼インフォメーション=1 03・5686・2612 ▼ホームページ=http://inuneko.milkcafe.to/

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太陽系の天体

太陽系の天体(The International Astronomical Union/Martin Kornmesser)

秋の夜長に宇宙(そら)の話《上》

冥王星 奇譚

太宰 一           

 

水・金・地・火・木・土・天・海・冥――。

このフレーズ、太陽系の9つの惑星を覚える際に使った方は多いはずだ。しかし、マスコミの報道通り、第9惑星であった冥王星は惑星の座を追われ、とりあえず今は「矮惑星(わいわくせい)」と呼ばれている。

とりあえず、とは「矮惑星」という呼び名は仮で、今後専門家の議論を経て、正式な日本名が決められることになっているからだ。

とはいえ、冥王星は冥王星であって、存在しなくなったわけでもなく、その名が無くなってしまうわけではない。太陽系の天体に関する私たちの認識が深まり、分類について変更の必要性が生じたため、今回の「惑星の定義」決議に至ったわけだ。

そもそも私たちは、惑星について明文化され、共通に認識された定義をもっていなかった。なぜなら、私たちの生活と惑星はあまりにも密接な関係をもってきたからだ。

☆星占いの起源

一説によれば、数千年も前から惑星は人々に認識され、天文学や占星術の始まりに影響を与えてきたとされる。現在に通じる星座の源流は、今のイラクのあたりが発祥とされる。かつてメソポタミア文明の栄えたその地には「シュメール」と呼ばれる人たちが現れ、都市国家を築き、文化的な生活を送っていた。

そこでは数学が発達し、今から4000年ほど前に、連立方程式やピタゴラスの定理までも使われていたという。その文化を受け継ぎ開花させたのはカルデア王国。新バビロニア王国としても知られるこの国では、惑星が夜空を動く周期を高精度で求めていた。

このころ夜空に肉眼で確認されていた惑星は、水星、金星、火星、木星、土星の5つ。これに太陽と月を合わせると7天体となる。これらは「七曜」といって一週間のもととなった。インド、中国を経て日本にも伝わり、現在曜日となって生活に溶け込んでいる。

また、惑星は占星術にも欠かせない。占星術は「天変」と「宿命」の2つに分類することができるが、そのうち現在のいわゆる「星占い」に通じるのは「宿命占星術」。占いの対象となる人が生まれた時刻に惑星の位置を観測し、ホロスコープという星座と惑星の相関関係を表した図をつくり、その人の人生を占ったことから始まった。

☆土星が最果て

しばらくの間、太陽系は地球を含めて6つの惑星からなり、太陽系の果ては土星であった。

しかし、17世紀初頭に望遠鏡が発明され、18世紀初めにはニュートンらによって、太陽系天体の運行を理論的に理解できるまでになった。

18世紀後半から、惑星は立て続けに発見される。

1781年、イギリスの天文学者ウイリアム・ハーシェルは天体観測中に偶然、天王星を発見する。始めは誰もが惑星とは考えていなかったが、天体の動きを計算すると円に近い軌道を描いていることが分かり、惑星だと断定された。このことは数千年来ずっと考えられてきた太陽系の大きさを、ぐっと広げたことになった。

海王星は1846年、冥王星は1930年にそれぞれ発見されている。

☆神秘の冥王星

冥王星が発見されてから62年が経過した1992年。今度は冥王星の外側を回る天体が初めて見つかった。

それまで太陽系の果ては、まさに冥王星。ひょっとすると、未知の第10番惑星が見つかるかもしれないなどと、半分夢の世界として語られていた。

それが現在では冥王星と同じように海王星の外側の軌道を巡る天体の発見数は、1000個を超える勢いだ。

それらの中には、冥王星と同じくらいの大きさの天体もいくつか含まれている。もし新しい惑星の定義で冥王星を除外しなければ、これからの観測で惑星は次々と増える結果は目に見えていた。

冥王星は発見以来76年間、太陽系最果ての惑星という神秘性を感じさせる天体の象徴として、その役割を担ってきた。

それが冥王星自身の発見と同様に、歴史的な発見の積み重ねによって、「惑星とはどんなものか」という、少し前までは自明であるかに思われていた事柄に対しての問いかけが生まれた。世界中の天文学者は、惑星の定義について、ここ数年議論を重ねてきた。

報道から結果だけ聞くと、「冥王星がかわいそう」だとか「冥王星は降格したの」など、マイナスイメージが先行するが、決してそうではない。

それは天文学や観測技術の発達が、私たちの太陽系の理解を次々と塗り替えた輝かしい結果なのである。

☆太陽系の天体

■惑星(Planet)

水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星の8つ。

■矮惑星(わいわくせい・Dwarf planet)

冥王星、セレス、エリスの3つ。セレスはかつては火星と木星の間を巡る小惑星の位置づけだったが、その大きさから今回矮惑星となった。エリスは2003年に発見された天体で冥王星と同様に海王星の外側を巡る。冥王星よりもわずかに大きいと推定され「第10番目の惑星発見か?」と報道された。

※矮惑星は今後増える可能性大。すでに候補天体が挙がっている。また日本での呼び名は今後検討される。

■海王星以遠天体(かいおうせいいえんてんたい・Transneptunian Objects)

海王星の外側を回る小天体の総称。矮惑星である冥王星とエリスはこの代表格。

※これも日本名は未定。

■太陽系小天体(Small solarsystem bodies)

太陽系で、惑星・矮惑星・衛星でない小天体の総称。この中には、小惑星や彗星、海王星以遠天体のほとんどが含まれる。

※こちらも日本名は未定。

■衛星(Moon)

地球の衛星はおなじみの月。今までは惑星の周りを巡る天体とされてきたが、今後改めて定義が議論される予定。

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太宰一(だざい・はじめ)

プラネタリウム解説員・天文ライター。現在、都内のプラネタリウムで解説員を続ける傍ら、月刊「星ナビ」などの取材記事を手がける。

冥王星とその衛星

▲左より冥王星とその衛星カロン、ニクス、ヒドラ

NASA,ESA,H.Weaver(JHU/APL),
A.Stern(SwRI),and the HST Pluto
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