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忘れ得ぬ人びと 人生一期一会(20)

ウルトラマンと桜井浩子さん


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根本 圭助

昭和10年2月、東京・南千住に生まれる。第二瑞光国民学校4年生の時罹災。千葉県柏町に移る。小松崎茂に師事。主な仕事は出版物、及び特にTVキャラクターのマーチャンダイジングのイラストで幅広く活躍する。現在松戸市在住。小松崎茂作品を中心に昭和の雑誌文化を支えた挿し絵画家たちの絵を展示する「昭和ロマン館」館長。

 

昭和40年晩秋の一日、私は「日音」の内藤氏にひそかに局へ呼ばれて「ウルトラQ」のパイロットフィルムを見せられた。

「日音」というのは、TBS(当時はKRTV)の子会社で、TBSで放映されるTV番組や、同様に放送された音楽の著作権を管理する会社だった。

その日、「ウルトラQ」を試写室で見たのは、内藤氏の他に私一人だけだった。

前回にも記したように、私はTVキャラクターのキャラクターグッズ専門のイラストをその草創期から手がけており、色々な業者との交流があったので、新年(昭和41年)早々から放映される予定の「ウルトラQ」をよろしくPRしてくれという依頼と、同時に作品の感想を求められた。私は、グロテスクな怪獣が登場し、地球人をおびやかすというこの作品は正直商品化には不向きなものと思ったが、TBSの作品では、その前から昭和33年の「月光仮面」を皮切りに、「名犬ラッシー」「豹(ジャガー)の眼」「まぼろし探偵」「あんみつ姫」「隠密剣士」「エイトマン」「伊賀の影丸」「スーパージェッター」「ビッグX(エックス)」「宇宙少年ソラン」……等々で長くお世話になっていたので、その場では本音を吐けなかった。

特にその頃は8月から放映が開始された「オバケのQ太郎」が大人気を呼び、また一般向けとしては昭和37年から始まった藤田まことの「てなもんや三度笠」の人気も相変わらず続いており、業者の皆さんもTBSのキャラクターはヒットするといって血眼になっていた。

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ウルトラマン対ガボラ

▲「ウルトラマン対ガボラ」(筆者が所有する南村喬之氏の原画・下も)

 

そうした中で、「ウルトラQ」は昭和41年1月2日(日)午後7時から第一話「ゴメスを倒せ」でスタートし、私の予想を大きく裏切り、26・5%の高視聴率をマークした。タイトルの「Q」は、クエスチョンの頭文字からとったものでミステリー色を反映させようという狙いだったと聞いている。

この「ウルトラQ」に江戸川由利子役で登場したのが、今回の主人公桜井浩子さんである。桜井さんは昭和21年東京の生まれで、今なお明るく若々しく円谷プロに在籍し、活躍を続けている。昨年12月6日から本年1月20日まで、六本木ヒルズで「ウルトラマン大博覧会ROPPONGI天空大作戦」という展覧会が開催されたが、その打ち合わせで、関係者を引きつれ、私の書庫(柏のアパート)や、拙宅にも何回も来てくれた。

さっぱりした気性で多くの人に愛されているが、レタリング検定第2級(文部省認定)という特技を持ち、手編みニットのデザインを趣味に持つという素敵な女性である。

「ウルトラQ」は私のみならず玩具・文具など多くの児童向け産業関係者が当初抱いた予想を見事にくつがえしてしまった。同年3月27日放映の「ガラダマ」においては、39・4%という驚異的な高視聴率をマークし、それは当時放映中の「てなもんや三度笠」を上回る数字であった。

左から初代ウルトラマンの黒部進氏、桜井さん、筆者

▲左から初代ウルトラマンの黒部進氏、桜井さん、筆者

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世代を越えたヒーロー

「ウルトラQ」の人気を引きついで同年(昭41)7月17日、「ウルトラマン」が誕生する。第一話「ウルトラ作戦第一号」(宇宙怪獣ベムラー)は34・0%の視聴率をあげ、バルタン星人が登場する第二話「侵略者を撃て」も34・5%とシリーズは30%を上まわる勢いが続き、第33話の「禁じられた言葉」(メフィラス星人)や第37話の「小さな英雄」(怪獣酋長ジェロニモン)等は40%を上まわる視聴率をマークした。

桜井浩子さんは、科学特捜隊の中の紅一点フジアキコ隊員役として通信や連絡を主な任務とする隊員として毎回大活躍を続けることになった。

懐かしい科特隊の面々を改めて紹介すると、キャップのムラマツ役にベテラン俳優小林昭二氏(故人)。主人公ハヤタ役に黒部進氏。科特隊きっての発明家イデ役に二瓶正也氏。射撃の名手アラシ役が毒蝮三太夫氏(当時は石井伊吉=いよし)。

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桜井さんは、児童劇団に所属していた小学校6年の昭和32年、東映「船頭姉妹」、「逢いたいなァあの人に」の二作に、ともに主演した中村雅子さんの少女時代に扮して映画初出演。のち昭和36年、中学を卒業と同時に、東宝ニュータレント一期生として入社した。同年、加山雄三主演の「紅の海」で本格的にデビュー。ついで「花影」「青べか物語」(昭37)と川島雄三監督作品に出演。長い黒髪と大きな瞳が魅力の少女俳優として多くのファンを得た。「ウルトラマン」に続く「ウルトラセブン」では前述の毒蝮三太夫氏がフルハシ隊員役で再登場。桜井さんもアンヌ隊員の友人役でゲスト出演している。

映画に、テレビに、ラジオにと今なお忙しい桜井さんのエネルギッシュな活躍には心から敬服している。

それにしても「ウルトラマン」から「ウルトラマンメビウス」まで、昭和から平成へと「ウルトラマン」は長い間少年たちのヒーローとして君臨してきた。いや、少年ばかりではない。つい先日三週連続で放映されたNHKBS「ウルトラマン熱中夜話」では、「男の子を生んだお陰で、ウルトラマンに逢うことが出来た」と喜ぶ女性のファンもいて、驚かされた。

ウルトラマンシリーズのファンは上は40代後半から下は現在の幼児まで―文字通り親子二代にわたるもので、特にフジアキコ役の桜井浩子さんと、「ウルトラセブン」アンヌ隊員役のひし美ゆり子さんは永遠のアイドルとして今なお熱心なファンに囲まれている。

「子供に夢を」という熱い思いを底流に、若いスタッフが心血を注いだウルトラマン。その「ウルトラマン」を描いて恩恵をうけた一人として、私も改めて多くのスタッフとヒロインのお二人に熱いエールを捧げる次第である。

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超ワイド画報オール怪獣大激闘

▲「超ワイド画報オール怪獣大激闘」(『少年マガジン』昭和42年5月7日号)