流鉄が100周年

馬橋駅と流山駅で記念イベント

大正5年(1916)3月14日に「町民鉄道」として誕生した流鉄(平成20年に総武流山電鉄から改称)が、今月で開業100周年を迎え、12日に「流鉄開業100周年記念祭」が馬橋駅周辺、流山駅周辺で行われた。馬橋から流山まで6駅、5・7km。時間にして11分という路線を黄色や緑、柿色の可愛らしい電車が走っている。2両編成で、住宅街や桜並木の中を走る姿は、流山市はもちろんのこと、松戸市民にも親しまれてきた。

多くのファンがつめかけた「ろこどるトークショー」の写真▲多くのファンがつめかけた「ろこどるトークショー」

馬橋駅では小宮山英一流鉄㈱社長や本郷谷健次松戸市長、井崎義治流山市長らがテープカット。小宮山社長は「流鉄はまことに小さな東京近郊のローカル鉄道です。今まで何度も経営危機がありましたが、独自の力で、どこの系列にも属さずにやってまいりました。町民鉄道としての歴史を踏まえて一生懸命やっていくつもりです。今後とも市民、行政の協力をお願いします」とあいさつした。

馬橋駅西口にある馬橋西ノ下公園では「ろこどるトークショー」が開催された。TBSテレビで放送されたアニメーション「普通の女子高生が【ろこどる】やってみた。」のコラボ企画として宇佐美奈々子役の声優・伊藤美来さん、小日向縁役の声優・三澤紗千香さんが、松戸市、流山市の銘菓の名前を当てるクイズなどに挑戦した。同作品は流山市をモデルにした「流川市」を舞台にローカルアイドルとなった女子高生の奮闘を描くというもので流鉄線や東武線をモデルにした電車も登場する。

 

馬橋駅であいさつする小宮山社長の写真▲馬橋駅であいさつする小宮山社長

流山駅でもテープカットなどのセレモニーが行われたほか、子どもたちが路上に描いた「線路」の上を紙製の電車が走る「お絵かき線路」、流鉄の電車と子どもたちが綱引きをする「流鉄と綱引き」、流鉄車両を使っての「乗務員室での写真撮影」やジオラマや模型を展示した「流鉄車両ミュージアム」、「流鉄中吊りクイズ」、「ステージイベント」、西武鉄道、つくばエクスプレス、銚子電鉄、山万ユーカリが丘線、新京成電鉄、いすみ鉄道、流鉄の「私鉄ブース」などが行われた。

 

流山駅周辺を走る「ロードトレイン」の写真▲流山駅周辺を走る「ロードトレイン」

流山本町では、「ひなめぐりスタンプラリー」や「ガイドツアー」も行われた。

また、4月10日まで、流鉄沿線で「フォトスクープハイキング」が行われている。

各駅で配布されている「地図」を頼りに「珍樹アニマル」(樹の幹や枝に現れた動物に似た模様や形。2面に写真)を探し、スマホやデジカメなどで撮影して各エリアのお店でチェック。各エリアで珍樹アニマルのスタンプをすべてもらい、エリアの駅に行くと「各駅エリア達成賞」としてオリジナル缶バッジがもらえる。6エリアすべての駅のスタンプをもらった人には「全エリア制覇賞」として5つの電車が勢ぞろいした豪華な缶バッジがプレゼントされる。

 

「お絵かき線路」を社員がけん引する紙製電車が走るの写真▲「お絵かき線路」を社員がけん引する紙製電車が走る

また、アンケートに答えると、抽選で6人に3000円相当の、松戸市、流山市の銘菓がもらえる。問い合わせは電話 366・7327松戸市文化観光課。

 

「町民鉄道」の100年

明治20年代の後半、日本鉄道による土浦線(現在の常磐線)の建設案が発表された。ルートは、金町方面から松戸を経て流山を通過するものと、千住から三郷を通り江戸川を渡った後、流山を経て野田へ向かうルートの2つ。いずれも、流山を通るルートだったが、これに流山の水運業者を中心に激しい町ぐるみの反対運動が起こった。鉄道の開通による水運業の衰退を懸念した運動だったようだ。

この運動により、土浦線は松戸から馬橋、千代田村(現在の柏市)を迂回して北上するルートとなり、流山は「水運の町」として繁栄を続ける。しかし、その後、自然の条件に左右されやすい水運は衰え、スピードと確実性のある鉄道による運輸が発展を遂げていった。市民の足としても、東京へ出るのに数時間かかる船は敬遠されるようになり、流山町民は松戸駅、後にできた北小金駅まで約1時間から1時間30分かけて歩き、鉄道を利用するようになった。

 

流鉄の電車と綱引きをする子どもたちの写真▲流鉄の電車と綱引きをする子どもたち

こうしたことから、町民の間で流山まで鉄道が通じたら、という希望が芽生え、それが流鉄誕生につながったという(北野道彦氏の著書『総武流山鉄道の話 「町民鉄道」の60年』 崙書房出版などより)。

現在の車両は5編成10両。2両編成の電車を最高時速約55㎞で走らせている。全車、西武鉄道から購入した。

車両はそれぞれ色が違い、愛称がつけられている。レモンイエロー(なの花)、ライトブルー(流馬)、オレンジ(流星)、赤(あかぎ)、ライトグリーン(若葉)だ。愛称は、利用客から募集したもの。子どもたちに一番人気があるのが「なの花」だという。

 

電車の中につくられた「流鉄車両ミュージアム」の写真▲電車の中につくられた「流鉄車両ミュージアム」

駅は現在6駅だが、開業当時は、流山、鰭ヶ崎、大谷口、馬橋の4駅だった。大谷口駅が廃止となり、小金城趾駅ができたり、赤城駅(後に赤城台駅。現在の平和台駅)と幸谷駅を新設して、現在の6駅となった。木造駅舎の流山駅は、関東の駅100選に選ばれている。

現在では自動改札が主流ではあるが、流鉄の駅には1台もなく、現在も駅員が切符を回収している。利用客とは顔見知りになることが多く、過去には駅員と利用客が結婚したというローカル鉄道ならではの話題もあったという。

そんな流鉄も2005年に開業した「つくばエクスプレス(TX)」の影響で、乗降客も約6割(23年度は1日あたり7700人)に減少したという。それでも、昔の面影を残す駅舎や古い車両を求め、流鉄に乗車するという人も多い。