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- カテゴリ: 日曜日に観たいこの一本バックナンバー
- 2016年12月11日（日曜）09:00に公開
- 作者: 戸田 照朗
日曜日に観たいこの一本
ブルックリン
１９５０年代にアイルランドからアメリカに移住したエイリシュという少女の話。長い船旅では荒波の洗礼を受けて、酷い船酔いに。緊張の入国審査。アイルランド人が多く移り住んだニューヨーク・ブルックリンでの寮生活。職場はデパートの売り子。硬い表情で笑顔も作れず、ホームシックに。そんな中、イタリア移民のトニーとの出会いが、初めての都会生活に彩を与えていく。
ヨーロッパからアメリカへの移民という壮大な話でありながら、なんだか身近に感じるのは、田舎から東京へ出てきた人にも通じるような共感があるからだろう。
私が日本人だから、細かいところに気がつかないだけかもしれないが、エイリシュは美しい白人の女性で、話す言葉も英語で、アイルランドから来たということ以外は、ほかのアメリカ人となんら変わらないように見える。だからアイルランドという田舎から、ニューヨークという大都会に来た人の上京物語のように見えるのだ。
エイリシュの背中を押したのは姉のローズだった。アイルランド全体がそうなのか、エイリシュの住む町が特別にそうなのかは分からないが、どこか息苦しい。エイリシュは才能があってもまともな仕事につけない。姉のローズはこの町で会計の仕事をしながら母を支えていく覚悟を決めている。でも、妹のエイリシュにはもっと自由に自分の可能性を試して欲しいと願っている。それは、本当はローズ自身がやりたかったことなのかも知れない。彼女は妹に自分の夢を託したのだ。
自然は文句なく美しい。しかし、田舎の町の人間関係はどこか息苦しい。どこの家のだれが、なにをしているかということを、町中の人間が知っている。そんな狭い世界を飛び出して、都会に出てきた。辛いことがあっても、振り返らず、もう前を向いて進んでいくしかない。同じ経験をした人なら、いろんな場面で、懐かしさを感じるだろう。
エイリシュを演じるのはシアーシャ・ローナン。凛（りん）とした清潔な感じがいい。どこか新垣結衣さんに似ていると思った。
監督＝ジョン・クローリー／出演＝シアーシャ・ローナン、ドーナル・グリーソン、エモリー・コーエン、ジム・ブロードベント、ジュリー・ウォルターズ
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